最初の部屋への帰還
探索者は最初の部屋へなだれ込む。
疲労か緊張の糸が切れたからか、探索者は入室した瞬間に床に倒れこんでしまった。
顔を上げてすがるように少年の姿を探す。
いない。
人形も机の上からいなくなっている。
手の中にあったはずの人形の左腕も、いつの間にかなくなっていた。
いったいどこへ、と考えていると、背後から走り寄る音とブツブツと何かをつぶやく声が聞こえてきた。
(聞き耳)
女の声。
「貴様も私とあのひととの邪魔をするのか」
「憎い。憎い憎い。あの人形も、あの人形に加担する貴様も憎い」
女が開け放たれたままの部屋へと飛び込んできた。
そのまま倒れ伏している探索者へと馬乗りになるよう飛び掛かってくる。
首へ手がかけられ、力を込められる。
何とか抵抗しようともがくが、女を振り払うことができない。
「憎い。」「貴様も邪魔だ。」「消えろ。」女は絶えず呟いている。目は血走っており、到底正気といえる状態でないことは理解できた。
「邪魔ものさえいなければあのひとはきっと私を見てくれる ―――ッ」
もうダメかもしれないと思った時、ふいに女の力が弱まった。
見ると白いブラウスの脇腹に赤い染みが広がっている。女の体からナイフの柄のようなものが生えている。
「勝手なことを言わないでくださいよ」
怒気を含んだその言葉と、何か肉塊を蹴るような音がしたと思うと、女があなたの横へ倒れこんだ。
肺に空気を取り込みながら見やると、完成した人形を抱えた少年が立っていた。
少年はあなたの視線に気が付くと、
「修理屋さん、彼女を修理してくれてありがとう。
それだけじゃなく、これを僕の領域に引きずり込んでくれたおかげでもう僕たちに害がないようにお話できるようになりました。
感謝しても し足りないな!
早速報酬を、といきたいのだけれど今はやることがあるから報酬は後から送らせてもらいます。
どうもありがとう。」
少年があなたにそういうと、あなたの意識は徐々に遠のいていった。
最後に人形と目が合った。微笑んでいるようだとあなたは感じたことだろう。
目が覚めると、あなたの寝た場所だった。
あれは夢だったのだろうか。
夢にしては走り切った疲労も首を絞められた感触もとても生々しかった。
ふと枕元を見たあなたは、寝る前にはそこになかったものに気づくだろう。
あれが夢だったのか現実だったのかは関係ない。
あなたの中にはあの空間で少年と人形のために奮闘した記憶が確かに残っている。それはゆるぎない事実であり、それ以上を追求するだけ野暮というものだろう。
そうしてあなたはいつもの日常へと帰っていくのだった。
ED.2 あなたの役割
報酬
- 生還報酬:1d6
- 少年・人形からの好感度が高い(KP判断):1d3
- KPからの助言なしに正しい【6】の部屋を選択:1d6
- アーティファクト:怪異辞典(オカルト+20%)
- アーティファクト:彼岸花の根付
彼岸花の根付
アクリルのような透明な立方体に小さな彼岸花が閉じ込められている根付。
1度だけSANチェックを成功扱いにすることができる。
使用後は何の力も持たない根付になる。